昭利の一本道 [22] 財団法人の設立とグッドデザイン賞へのチャレンジ

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 1999年、もう一つ立ち上げた大きな事業が、財団の設立だ。

 基幹の太鼓製造業と並行し、太鼓を核とした文化活動機関を設けて浅野太鼓の事業体の両翼とすべく、太鼓界初の非営利目的法人『財団法人浅野太鼓文化研究所』を設立。「太鼓の演奏・普及活動」「演奏指導」「太鼓関連書籍の出版」の三つの要素を事業の柱とし、太鼓文化のさらなる振興と発展のためにさまざまな活動を遂行するのが目的だった。

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 まず一つ目の「太鼓の演奏・普及活動」では、大型バスを改造し、後部座席を外して大小の太鼓を積載、焱太鼓とともに全国の学校や施設を訪れて太鼓教室や演奏実演を展開。二つ目の「演奏指導」として、「大太鼓教室」ゃ「親子太鼓教室」など、太鼓の種類や受講者の条件などを踏まえて各種の太鼓教室を20種類以上主宰。三つ目の出版事業では、10年前に創刊した太鼓専門情報誌『たいころじい』に加え、太鼓初心者用の入門書や太鼓に関する解説書など、14の指導書や専門書を刊行。その中の1冊『太鼓という楽器』は2005年、(社)日本図書館協会の選定図書に指定された。

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 一方、太鼓製造の面では、2000年、かねてからチャレンジを目論んでいた『グッドデザイン賞』に応募。この賞は公益財団法人日本デザイン振興会の主催により毎年開催される日本で唯一の総合的デザイン評価であり、太鼓業界では手つかずの分野だった。"太鼓"といえば形が決まっているように思いがちだが、私はまだまだデザインの余地があると考えていた。以前から密かに意匠をあたためていた新型の太鼓『楽鼓』は、ケヤキの胴に美しい木目模様を浮かび上がらせた締太鼓で、胴の中央部がゆるいカーブを描いてややくびれており、従来の締太鼓に比して高級感が豊かで工芸的な外観を特徴とした。我ながら会心のデザインだった。初めての応募で『楽鼓』は業界初のGマーク受賞を果たし、続いて翌2001年、大型の団扇太鼓に一枚革を張った『月鼓』、さらに2003年『かつぎ桶太鼓21世紀モデル』が受賞。2015年には鼓童との共同開発により、桶胴太鼓の両面の革を締めるロープの締め具合に応じて自在に音程調律が可能な『調律桶太鼓 奏』を応募。その結果、『2015年度グッドデザイン賞』に加え、すべての応募作の中でひときわすぐれた100の製品に贈られる 『グッドデザイン賞BEST100』、そしてグッドデザインに選ばれた中小企業の対象の中で、とくにすぐれた作品に贈られる『ものづくりデザイン賞』(中小企業庁長官賞)の、3冠をいただいた。